公共工事・民間工事の積算代行
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建通新聞社建通新聞神奈川版より

「新年特集第1部―新たな時代に」

〜 神奈川版 1面掲載記事より 〜

【求められる正義の再構築】
戦後60年を経て、産業大国として社会資本を整え、高度情報化社会を築いた日本だが、さま
ざまな場面でほころびが目立ち、社会的なモラルは退化する一方だ。企業の法令順守(コンプ
ライアンス)の必要が叫ばれる中で、たくさんの不正な行いが表ざたになっている。
不正を行うのが人であれば、これを正すのも人である。不正行為が発覚するきっかけの多くが
内部告発であることは一つの救いでもある。
事業者として守るべきことを必ず守る。そういった当たり前のことを徹底すれば問題は起きな
い。
正義が保たれるためには、公平性や公正性が実感できる社会であることが必要だ。
建設産業における正義は、工事の品質や安全の確保と、これらを実現する技術力の向上や職場
環境の整備である。公共工事の品質確保を目指して05年4月に公共工事品確法が施行され3年
が経過しようとしている。しかし、品確法に基づき事業者の技術力を評価する総合評価落札方
式の入札の導入は、地方公共団体ではほとんど進んでいない。進んだのは、低価格入札(ダン
ピング)を助長する一般競争入札や価格情報の事前公表ばかりだ。
いま求められているは、さまざまな分野での正義の再構築である。

入札・契約制度は政策の一つ

〜2009年1月7日 神奈川版 10面掲載記事より〜

神奈川県の新入札制度「かながわ方式」の運用開始から約2年。
プラスにしろマイナスにしろ、さまざまな側面でその効果が現れてきたことだろう。
現在では、県内の多くの自治体で条件付一般競争入札を導入し、入札の状況は様変わりした。
しかし、低入札の横行など解決すべき課題が多いことも事実だ。
ここでは「入札・契約制度は自治体運営の重要な政策の一つ」という視点に立ち、現状の問題
を探った。(相模支局=廣石倫)


【品確法を受けた総合評価方式の導入】
「優良工事施工業者対象」や「社会貢献企業対象」といった、単なる請負契約とは異なる意味
合いを持つ入札制度も増えつつある。
だが、この大きな変化の過程において、一貫して主張されてきたことは「競争性の確保」だ。
より多くの入札参加者を募ることにより、競争性を確保する。価格競争によるコスト削減が目
的である。
しかし、その入札で成立した価格は、本当に適正な市場で形成された価格であろうか。
競合する相手を多くするという手法は確かにその市場で形成される価格を下げるには効果的だ。
しかし、実際に入札に参加する立場からは、こんな声も上がっている。
「1件の入札に30社が参加するということは、単純に確率で計算すれば30回に1回落札で
きるということだ。
本来ならば、落札できない29回の積算にかかる費用も、その1回の落札に計上すべき経費。
価格競争に勝つためには、実際にそのコストを価格に上乗せすることは不可能」。
入札は単純なくじ引きでもなければ、順番でもない。価格競争だ。
公共事業の発注や契約をめぐる不正に端を発した制度改革であり、それに対する世論の後押し
が大きいことも事実。
だが記者の目には、公共事業を「完全市場経済」に近づけることで競争性の確保を実現しよう
とする行為に映る。
それも「市場の失敗」に対する対策が極端におろそかな、だ。
「本来は計上すべきコストを、価格に反映することができない」という悲鳴が数多く聞かれる
ということは、その市場がもつ価格調整機能がすでに障害を起こしている可能性が高い。

【市場価格は適正価格か】
受発注者の関係は、ある意味で労使関係に似ている。
契約における双方の当事者でありながら、その力関係においては対等になりにくいという面か
らだ。
労働力を提供することによって対価を得る」という経済活動は、完全な自由経済に立脚すれば
、ともすると労働者にとって不利な状況に陥りがちだ。労使関係においては、この歴史を踏ま
えたうえで「労働者の保護」という観点から法が整備され施策が講じられてきた。
もちろん、労使の力関係は経済環境によっても変化する。
新卒者の就職戦線において「売り手市場」「買い手市場」などという表現が用いられるのが最
たる例だ。
当然のことだが、不景気であればあるほど売り手である就業者の立場は弱い。
公共事業ではどうだろう。
具体的な事業執行に携わるのは、例えば国や地方自治体といった公の機関。
だが、本質的な発注者は市民・国民だ。それが圧倒的な優位に立つのは明らか。
誤解を恐れずに言えば、「世論」はすなわち「買い手の言い分」でもある。
そして今、公共建設事業という市場は間違いなく「買い手市場」だ。
供給が需要を上回る現状も、いずれ売り手が淘汰され寡占状態に陥ることで均衡する。
しかし、それが地域の産業の衰退やそこに従事する労働者の生活を脅かす結果を招くとしても
市場原理は価格の均衡に至る過程で発生する「負の効果」を防止する機能を備えてはいない。
それができるのは「政策」だけだ。

【リスクへの備えも正当なコスト】
現状で過度な低価格受注を防止する仕組みは最低制限価格や低入札価格調査制度に限られてい
る。実質的にほとんどその効果が認められない低入札価格調査制度についてはここでは言及し
ない。
だが最低制限価格が設定されている入札でも、落札を希望する者に要求されるのは「いかに最
低制限価格を推測し、入札額をそれに近づけるか」ということだ。実際、多くの入札額は制限
価格付近のラインに集中している。そこには「実行予算を組み、必要な経費を計上する」とい
う余地はない。
『まず価格ありき。』
必要なコストであってもそれを計上すれば落札できないケースもでてくる。
材料の調達の費用や労務者の人件費、安全管理経費。入札は、それらの積み上げで算出された
価格から「何%の割引をするか」という競争だ。
「適正価格から、いくら値引きするか」を競うシステムと言い換えてもいい。
そこには「不当に価格を吊り上げる」という行為が入り込む余地はない。
予定価格を1円でも上回れば、入札そのものが成立しないという絶対的な原則がある。
特別法や前渡金などの諸制度を考慮しなければ、請負契約における完成物の引渡しと代金支払
いは同時履行義務だ。それゆえ契約時には、さまざまなリスクを考慮して履行に必要な金額を
算出する必要がある。
物件の完成に必要な経費を積算し、履行中のトラブルに対応するための保険的な経費や、通常
の業務に必要な経費を計上すること。
これを「正当な商取引を逸脱する行為」と判断するのは極めて不自然だ。
しかし、これらの積み上げによって算出された予定価格に対して割引の程度が少なければ、そ
れを「不当な価格の吊り上げ」と断じる見解がまかり通っている。

[最大の費用対効果を生む制度を]
入札契約適正化法、品確法の施行を受けて、多くの自治体が「価格以外の要素」を施工者選定
に反映させる仕組みを導入し始めている。
企業が持つ技術力を評価する趣旨で実施された総合評価方式。
優れた工事の実績を評価する優良工事施工業者対象案件。防災協定など、地域への貢献を評価
し参加要件に反映した社会貢献企業対象入札。
このほかにも「経審の点数」や「地域要件」以外の要素が一般競争入札への条件に設定される
形で、「価格以外の要素を評価」する案件も導入されつつある。
建災防への加入を参加要件に設定した例などは、安全管理への取り組みを評価したと考えられ
る。
行政としての発注者の政策的な意図が、少しずつ垣間見られるようになってきた。
改めて記すまでもなく、公共事業は単に道路や公園、公民館と言った施設を整備することだけ
が目的ではない。
地域振興、雇用促進、ソフトも含めた将来的な地域のビジョンを踏まえて実施されるものだ。
であるならば、個々の投資が持つ目的は、単なるハードの整備に留まらないはずだ。
企業の新規立地を促し、地域の産業振興を図る施策。
助成金を交付し、雇用を確保する施策。こういった施策に予算を投じる一方で、既存の産業に
対してはなんら振興策を講じない。それに対して少なからぬ違和感を覚える。
公共事業において、実際に工事を発注する官公庁はいわば「市民の代理人」だ。預かった資金
で最大限の効用を挙げるべく、予算を配分し事業を遂行する。
確かにそこでは、「本人」である納税者の意向が最大限に尊重されなければならない。
だが、それと同時に代理人は、本人よりも深い知識や高い技術を持つ専門家としての立場で、
その資金を効率よく運用していく義務も負っている。
確かに「一つの工事が低価格で完成した」という事実は、代理人としての義務を履行した成果
として理解を得やすい。
だがその一方ではその投資がもたらす複合的な効用の芽を摘んでしまっているかもしれない。
最も低い価格で請け負う意思を示したものを施工者に選定する」という単純な図式では、最大
の投資効果が得られるはずはない。本人が知りえなかった効用を生む施策を展開してこそ、「
例え契約金額が高くなったとしても、それは複合的な成果を得るための合理的なコストである
」という説明ができてこそ、行政を担う代理人だ。
そういった意味では、入札は単なる施工者選定の手段ではない。政策の一つだ。
例えば価格競争の要素を排除し、技術力や安全への配慮、地域への還元策などだけを評価した
入札制度はどうだろうか。
最大の評価点を得た落札候補者と、もちろん予定価格の範囲内で契約する。
必要なのは、明確な政策上の意図があることと公正であることだ。
地域の振興に寄与し、最大限の費用対効果を生むための、明確な意図を持った入札制度に期待
したい。

建設産業の誇りと責任―低価格受注・低賃金の連鎖にメスを

〜2009年1月8日 神奈川版 1面掲載記事より 〜

「法律をいくら厳しくしても問題は解決しない。耐震偽装などの不正を防ぎ、工事の品質を確
保するためには、設計と施工のすべての関係者が誇りと責任をもって仕事ができるよう、対等
な関係や、生活やスキルアップの保障を得られる環境をつくる必要がある」・・・・・・・・以下抜粋

価格に関して長い間放置されている問題には、公共工事での低入札もある。一般競争入札の導
入や価格情報の事前公表などを中心とする、行政の入札制度改革で増加した低価格受注は、い
まや民間工事の価格にも影響を与えているという。
低価格受注によって懸念されるのが、工事の品質低下とともに下請けへのしわ寄せだ。
支払い代金の低下は建設技能労働者の賃金にも直結する。
特にほかの業種との格差が大きい。
全産業で賃金がピークになる50〜54歳男子の年収では、県内全産業の780万円に対して建設
労働者は427万円で、353万円の差が生まれている。
年収格差は35〜54歳の幅広い年代で前年度より拡大した。
賃金の低さは、建設業へ入職する若年労働者の減少や、ほかの業種への転職の増加につながっ
ており、将来の建設業を根底から揺るがしかねない問題だ。
こういった建設労働の現状の問題を重く見た横浜建設業協会(白井享一会長)は、昨年から横
浜市内の建設労働団体との連携に乗り出した。昨年12月には、横浜市建設労働組合連絡会(石
渡暉之会長)とともに、市内建設業の振興や予定価格の事前公表の廃止など入札制度の見直し
などを横浜市に要望した。
労使の立場を超えた横浜建設業協会と横浜市建設労働組合連絡会の取り組みは、建設業の問題
解決に向けた新たなアプローチだ。
建設業協会の白井会長は「建設業を健全化し、いいものをつくっていくためには現場で働く人
たちの所得を向上させ、生活を安定させることが必要だ」と話す。
横浜市は、公共工事の低入札と建設技能労働者の低賃金の実態を直視し、工事の品質確保の観
点からも、低入札の指標となる予定価格事前公表の廃止などを判断するべきだ。
昨年12月には国土交通省が「低価格受注問題検討委員会」を設置するという動きもあった。
低価格受注が元請け業者に与える影響や下請け業者へのしわ寄せの実態を解明し、地方公共団
体での低入札の問題などに対応していく方針だ。
これらの動きをスタートした新しい年にさらに発展させ、低価格受注と低賃金の連鎖にメスを
入れ、建設業で働くすべての人の誇りと責任を回復するかたちで産業の将来展望を開かなけれ
ばならない。